磁石な恋 ～嫌よ嫌よは嫌なだけ？～
「真海！」

男は彼女の名前を呼びつつ窓を叩き続ける。

大きな声で呼ばれているわけでも窓を強く叩かれているわけでもないのに、恐怖心に飲み込まれそうになる。

───どうしよう───！！

「なんか用ですか？」

そこに悠馬が帰ってきて怪訝な顔で男に声をかけた。

───うわ、最悪！！

真海は急いでドアを開け車から降りた。

「君は？真海の彼氏？あ、平日の昼間に一緒にいるんだから会社の同僚か。」

背が高めで華奢な彼は無遠慮に悠馬を上から下まで眺める。

「同僚兼彼氏ですけど何か？」

悠馬は淡々と言う。身長は同じくらいだがガタイは男より遥かによかった。

「な、あんた何言って・・・！」

真海は悠馬の発言が訳がわからず驚いて見上げる。

「会社の人達には言わないでおこうって言ってたけど部外者には言ってもいいだろ。行くぞ。」

真海の手を握って引っ張り車に乗せようとする。

「え、ち、ちょっと・・・！！」

握った手を見ておののく。混乱で目が回りそうだ。

「真海、携帯変えたんだろ？俺は変わってないからまた連絡して。」

男は悠馬の発言に全く怯むことなく真海を見つめて言った。

「しねーよ！こいつは俺の女なんだって。」

悠馬は繋いだ手を離すと真海の肩を乱暴に抱き寄せて、ドスのきいた声で言う。

「な・・・！？」

───何、この状況・・・？全く理解できない・・・夢でも見てるんじゃないだろうか。というか夢であってほしい。

「じゃあ、彼氏に飽きたらでいいから。だって君、どう見たって真海の好みじゃないでしょ？じゃあね。」

男はくすくすと面白そうに笑いながら去って行った。
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