大嫌いの先にあるもの
This happened 12 hours ago (1) 【Side 黒須】
土曜日の夜8時。
いつものようにカウンセリングルームの三人掛けのソファに腰を下ろすと、スーツ姿のまま横になる。
ここはタワーマンションの20階にある一室で、広い窓からは今の時間はイルミネーションを見下ろす事ができた。
室内はゆったりとくつろげる雰囲気で、カウンセリングを受ける患者用のソファと、ドクターの一人掛けの立派なソファがあるだけで余計な家具はない。
BGMには控えめな音量でヒーリング系のミュージックがかかってる。
今かかってるのはオカリナがメインのものだった。
ピアノがメインの曲と、ジャズはかけないで欲しいとリクエストしてある為だ。
「それで、どうしたの?」
田所美沙が向かい側の席に腰を下ろすと話を始めた。
彼女とはもう三年の付き合いになる。アメリカの大学院で心理学の学位を取り、美人で口が堅いと定評のあるカウンセラーだ。顧客はセレブが多い。
「ドクター、最悪だった」
いつものように不機嫌さを隠す事なく口にした。
ドクター美沙の前ではありのままの感情を出すようにしている。
「僕なりに春音と向かい合おうとしたんだ。それで今日は春音のバイト先に行った。そしたら思いっきり嫌な顔をされて、泣かせたよ」
レンタル店での事を思い出すと胸がムカムカとする。
いつまで経っても春音との関係は修復できない。
「どうしてアルバイト先まで行ったの?」
いつものようにドクターに誘導される。
「昨夜、春音が僕の店に来たんだ」
「Blue&Devilに来たの?」
「ああ、友達とライブを聴きに来たらしいんだが、僕の顔を見て逃げるように帰った。だから駅まで追いかけたんだ」
「それで?」
「美香を殺したのは僕だって言われて何も言えなかった。だって彼女が言ってる事は正しいから。僕が美香を殺したんだ!」
強い罪悪感に耐え切れずソファを叩いた。
「僕が全てを台無しにしたんだ。全部僕が悪い」
ドクターがため息をつく。
「またいつもの堂々めぐりになってる。違うでしょ?本当はあなたのせいではないでしょ?」
「僕のせいだ。僕がすぐに駆けつけていたら美香は強盗に遭う事はなかったんだ。美香は二時間も僕を待ってて……」
悔やんでも悔やみきれない想いが込みあがる。
あの時、どうして仕事を優先させてしまったのか。
駆けつけていたら、複雑な事件の謎に想い悩まされる事もなかった。
いつものようにカウンセリングルームの三人掛けのソファに腰を下ろすと、スーツ姿のまま横になる。
ここはタワーマンションの20階にある一室で、広い窓からは今の時間はイルミネーションを見下ろす事ができた。
室内はゆったりとくつろげる雰囲気で、カウンセリングを受ける患者用のソファと、ドクターの一人掛けの立派なソファがあるだけで余計な家具はない。
BGMには控えめな音量でヒーリング系のミュージックがかかってる。
今かかってるのはオカリナがメインのものだった。
ピアノがメインの曲と、ジャズはかけないで欲しいとリクエストしてある為だ。
「それで、どうしたの?」
田所美沙が向かい側の席に腰を下ろすと話を始めた。
彼女とはもう三年の付き合いになる。アメリカの大学院で心理学の学位を取り、美人で口が堅いと定評のあるカウンセラーだ。顧客はセレブが多い。
「ドクター、最悪だった」
いつものように不機嫌さを隠す事なく口にした。
ドクター美沙の前ではありのままの感情を出すようにしている。
「僕なりに春音と向かい合おうとしたんだ。それで今日は春音のバイト先に行った。そしたら思いっきり嫌な顔をされて、泣かせたよ」
レンタル店での事を思い出すと胸がムカムカとする。
いつまで経っても春音との関係は修復できない。
「どうしてアルバイト先まで行ったの?」
いつものようにドクターに誘導される。
「昨夜、春音が僕の店に来たんだ」
「Blue&Devilに来たの?」
「ああ、友達とライブを聴きに来たらしいんだが、僕の顔を見て逃げるように帰った。だから駅まで追いかけたんだ」
「それで?」
「美香を殺したのは僕だって言われて何も言えなかった。だって彼女が言ってる事は正しいから。僕が美香を殺したんだ!」
強い罪悪感に耐え切れずソファを叩いた。
「僕が全てを台無しにしたんだ。全部僕が悪い」
ドクターがため息をつく。
「またいつもの堂々めぐりになってる。違うでしょ?本当はあなたのせいではないでしょ?」
「僕のせいだ。僕がすぐに駆けつけていたら美香は強盗に遭う事はなかったんだ。美香は二時間も僕を待ってて……」
悔やんでも悔やみきれない想いが込みあがる。
あの時、どうして仕事を優先させてしまったのか。
駆けつけていたら、複雑な事件の謎に想い悩まされる事もなかった。