だいすきボーイフレンド

なにもない恋

高3の夏休み、私は毎日のように図書館で勉強をしてた。

「隣いい?」
「ええで」

そして毎日のように翔平と私は会っていた。
ほぼ学校推薦枠確実とよまれる翔平は、本当は勉強なんてしなくてもいいはずなのに、なぜかいつも図書館に勉強しに来ていたからだ。

「涼香はなんでそんなに東京行きたいん」
「かっこいいやん、東京に生きる人間って」
「大阪に生きる人間もかっこいいやろ」
「私、表参道〜とか南青山〜とかそういう響きに憧れてん」

そう言う私を、翔平はしょうもない戯言言っとるわコイツという目で見る。

「晴人も涼香も東京行ったら俺寂しなる」
「じゃあ翔平も東京行ったらええやん」
「俺は憧れんもん」

そんなことを言いながら、赤い表紙の問題集をパラパラとめくっていく。

「全然問題解いてないやん」

ついツッコんでしまうと、翔平は笑って「必要ないもん」と本音をこぼす。

私は翔平のことが好きだった、と思う。

翔平がこの図書館に来なかったら、家で勉強してた。

「なんで毎日図書館に来るん」

ついそんなことを聞いてしまったことがあった。

「晴人も涼香も勉強ばっかして暇やもん」
「彼女でも作って遊んだらええやん」

その頃、晴人は東京の某難関私立を目指して毎日毎日夏期講習に通っていた。
結果的にそこは落ちるのだけど、一番忙しい夏を送っていたのは晴人だった。

だから毎日図書館行って勉強してるだけの私に白羽の矢が当たったわけだ。

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