だいすきボーイフレンド

喉に残る豚骨スープ

図書館はそういえば東京来てから滅多に来なくなったな、と感じる。

私にとっては勉強するだけの空間だったけど、そうか、翔平は普通に活用してたんや。

本棚から気になった本を一冊取って「これ本屋で気になってたやつや」と少し感動を覚える。

少し座席の方を見て、空席を探す。

ただで本読めるなんて最高やん。

と思ったその先に、見覚えのある人の姿を発見する。

まさかな、ここ東京やで。
でも。

耳にかけた髪の下から覗く刈り上げと、髪の流し方、淡いピンクのTシャツで確信する。

私はそっと近付き、後ろから肩をトントンと叩いた。
その人はゆっくり振り返り、私だと分かって驚いた表情に変わる。

「なんで」

周りに響かないような小声で言う。

「初めて来てみた」

翔平は本をそっと閉じ机の上に置くと、私を連れて本棚奥の人の少ないところまで移動する。

「なんでここにおるん」
「いや、東京の図書館そういえば行ったことないなー思って」
「にしても偶然が出来すぎやろ」

翔平が壁にもたれながら笑う。
私もつられて笑う。

「なんか本借りんの」
「借りてこかな」

私の答えに翔平はフンフン頷いた。

「この後どっか飯行かへん」

あまりにもサラリとしたお誘いに、私は一体どんな表情をしたんだろう。

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