だいすきボーイフレンド

盆の海

大学2年の盆、そういえば3人で海に行った。免許を取ったという翔平の運転で。

助手席は私で、後部座席に晴人一人だった。

「晴人彼女できたんやってな」

翔平が運転しながら、ミラー越しに晴人に言う。

「そやで、めっちゃギャル」

私が代わりに答えると晴人が笑った。

「そう、ギャル、ギャル」
「珍しく長続きしてるよな」
「もうすぐ2ヶ月記念日やで」

手で「2」を示しながら報告する晴人に、翔平が「2ヶ月て」と笑う。

「英文やっけ」
「英文」
「前のあすみちゃん、どこやっけ」
「あすみちゃんも英文」
「元カノ4人ともうちの大学内やんな」
「おお、経済、法学、経済、英文で今英文」

この頃の晴人はわずか半年で彼女5人目という遊び様だった。
翔平が呆れたように笑う。

「それ殴り合いにならんの」
「だんじり祭りみたいな子ばっかよな」
「だんじり祭りみたいな子て」

晴人の彼女話をしながら、私たちを乗せた車は無事海に着いた。

「ええやん、俺初めて来たかも」

砂浜に足を乗せるなり晴人が言う。

「彼女と来たかった?」
「れなちゃんと?いや、れなちゃん、大阪似合わへんもん」

以前写真で見せてもらった、日に当たるのが嫌いそうな真っ白な顔したれなちゃんの顔を思い出す。人工的な美しさだったことだけ脳裏に焼き付いている。

ビーチサンダルに砂が入る。
これが正解なんか、よう分からん。
私は砂が入らん方がいいと思う。

晴人は一人でぷらぷらと海の方へ向かい、砂浜に翔平と私で残される。

「翔平も彼女とうまくいってんの」

年末に会った時、秋から付き合ってる彼女がいると言っていた。

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