だいすきボーイフレンド

セミの一生

23時半過ぎ、ちょうど私はシャワーを浴びて髪を乾かしながらスマホをいじってた時だった。

「なあなあ」と突然声をかけられて初めて晴人が帰ってきたことを知る。

「びっくりしたあ」
「あのさ、俺と一緒に大阪戻らへん」

この男、突然何をおっしゃりますのん。

寝耳に水ってびっくりするやろな、そらそやな。
寝てるところ耳に水入れられたら、そらーびっくりするやろ。

そんな感じ。

私は髪がまだ半乾きなのにも関わらず、ドライヤーを洗面台に置く。

「どしたん、急に」

そう言いながら、まだキャミソールにショートパンツ状態だったことに気付く。

「うん、なんかさ」と言いながら晴人が私の背後に回って腕を回してきた。

「転職するか、まあ、今の会社でもリモートでも行けるかな、思てさ。それやったら大阪戻ってもええんちゃうかなって」
「だから何があったん」

晴人は静かに、私の左肩に顎を置く。

「前言うてたやん、大阪戻りたいって」
「ああ、あれ就活ん時な」
「うん、大阪戻ってさ、二人で部屋借りひん」

< 40 / 59 >

この作品をシェア

pagetop