だいすきボーイフレンド
「ごめん、ありがとう」

私が言うと、すました表情になってこっちを向く。

「表参道とか行こうや」
「え、晴人と行くん」
「他に誰と行くん」

なんか笑える。なんで私たちが二人で表参道歩かなあかんのん。

だけど実際に私たちは表参道に行った。秋のオープンキャンパスの時。

あっけなく私の夢は晴人と叶ってしまった。

大学合格じゃなくて表参道の方だけど。

意外と普通だった。
そして満足してしまった。

東京ってこんなもんなんや。

それと同時に、本当に東京でやっていけるのか初めて不安に襲われる。

「なあ」と、日本のど真ん中で、表参道を歩きながら晴人に声を掛けた。
少し先を行く晴人が「ん」と振り返る。

「東京来るやんな、晴人も」

私の確認に、晴人は少しだけ考えて笑った。

「不安になってる場合ちゃうよ」

本当にそうだ。

本当にそうだ。

「ありがとう」
「がんばろ」

手に持った重い大学の資料がずしっと存在感を出す。

晴人の言葉に頷いて、また一緒に表参道を歩き出した。

私たちは思い返すとずっと一緒に歩いてきてた。
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