年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 一緒にご飯を食べて、話をして。それだけでこんなに嬉しいと思うなんて、今まであっただろうか。まるで、初恋みたいだ。

 いい歳して、何を思ってるんだか……

 そんな自虐的な気分になりながら、俺はさっちゃんの家の前に車を停めた。

「今日はありがとうございました。色々と話が聞けて良かったです」
「どういたしまして。また聞きたい事思い出したらいつでも連絡して?」

 車を降りさっちゃんに荷物を渡す。今日もやっぱりとても重い。

「はい。これから依頼者の方を調べようと思うので、もしかしたらまた教えて貰いたいことも出てくるかも知れないです」
「うん。遠慮なく。さっちゃんの役に立てるなら光栄だ」

 俺の言葉に少し顔を赤らめながら、「じゃあ、失礼します」と小さな体を折り曲げてさっちゃんはお辞儀をする。俺はゆっくり持ち上がるその頭に、そっと手を乗せ少し撫でると手を離した。

 顔を上げたさっちゃんはとても驚いたように目を開いていた。より朱色に染まった頰が、その愛らしい顔に彩を添えている。

「おやすみ」
「……おやすみなさい……」

 そそくさと俺の前から去って行くその姿を見ながら思う。

 ごめんね。少しだけでも触れること、許して。本当は……もっと触れたくて、近寄りたいんだけど。
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