年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 あ~あ……。言えたらいいのに……

 そう思いながらパソコンを退かして机に伏せる。

 いつでも聞いてって言ってくれたのになぁ

 私は昨日の睦月さんを思い出す。
 優しく私を見るその顔。きっと、小さな頃から知る香緒ちゃんと同じような気持ちで私のことを心配してくれているんだと思う。きっとそうだ。じゃなきゃ、私を気にかけてくれる理由なんてないんだから。

 あんな風に笑顔を見せられて、頭を優しく撫でられて、私はもっと期待してしまう。
 もっと私に笑顔を見せて欲しいって。もっと私に……触れて欲しいって。

 どんどん心の中で大きくなって行く睦月さんの存在に、私は戸惑うばかりだ。こんな気持ちは初めてで、どうしていいのか全く分からない。

「……どうすればいいんだろ」

 そう呟くと、奥の部屋で寝ていたかんちゃんが走ってくる気配がした。椅子に足をかけ、私に散歩の催促をするように吠え始めるかんちゃんの頭を撫でて、「散歩……行こうか」と話しかける。
 それに返事をするようにかんちゃんは吠えた。いい気分転換になるかと私は立ち上がり、リードを取りに向かった。
< 135 / 611 >

この作品をシェア

pagetop