年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 それは淡い緑色。
 俺が最初に武琉君に出会ったのは、自然の多い場所だったし、見た目は狼みたいな精悍な感じがするけど、中身はかなり癒し系な気がする。

「武琉君、ああ見えて癒し系ですもんね?」

 俺の心の中を読んだかのようにさっちゃんは笑って言う。
 さっちゃんも、俺をかなり癒やしてくれてるけどね? なんて思いながら、「そうだね」と笑って答えた。

「決まり! 包んで貰ってくるからさっちゃんはこの辺見ててくれる? 人少ないし、見つけられると思う」

 さすがに会計するところまで連れて行くなんて無粋な真似は出来ないから、仕方なく手を離してそう言う。

「じゃあ、ちょっとウロウロしてます」

 さっちゃんから離れて俺はレジに向かう。
 さっき選んだものともう一つ。それを店員さんに伝えて会計を済ませる。

 さっちゃんがじっと一つのグラスを眺めていたことにはすぐ気づいた。
 淡いピンク色の桜の花がモチーフになってるもの。絶対気に入ったんだなぁって、そう思って見てた。
 けどさっちゃんは、自分はこれが欲しいなんて言ったりしないし、俺に強請るような視線を送ったりもしない。
ただ、美術品でも見るように、気に入った物を見てただけなんだと思う。

 さっちゃんも、喜んでくれるといいんだけどな……

 そう思いながら振り返り、俺は遠くに見えるさっちゃんの姿を目で追った。
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