年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 どうしよう……むちゃくちゃ可愛いんだけど

 恥ずかしそうに視線を泳がせているさっちゃんを見て、俺はそんな事を思う。そのまま一緒に歩いて、人を避ける度、俺に寄り添うように近づくさっちゃんの気配を感じて嬉しくなる。

 周りから見たら、恋人同士に見えてるかな?

 勿論、周りの人はそんなこと気にしてなんかないけれど、自分は気にしてしまう。
 そう見えてたらいいなって、そうなれたらいいのになって。

 デパートを抜けて外に出ると、人を避けて歩くほどではなくなる。さっちゃんはそこで添えていた手を下ろした。本当は凄く寂しい。けど、理由もないのにずっとそうしてて欲しいなんて言えない。

「一旦車に戻るけど、あと何処か寄りたいところある?」

 少し後ろを歩くさっちゃんに、振り向きながら尋ねると、俯き気味に歩いていたさっちゃんは弾かれるように顔を上げた。

「えっ! あ、特には……。あの、今日はありがとうございました。荷物まで持たせてしまってすみません……」

 さっちゃんは、寂しそうに見える顔でそんなことを言った。

 もしかして、もう帰りたいのかな?

 時間はまだ夕方に差し掛かった時間。まだ早い、と言っていいような時間だった。
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