年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「じゃあ乾杯!」

 私の斜め向かい、つまり睦月さんの向かいの席で、真琴が調子良くそんな声を上げると、私達はジョッキを合わせた。

 結局、最初はカウンターにいた2人と一緒にテーブルに移動すれば? とおじさんに言われて、渋々そうする事にした。真琴なんか、もう興味津々で睦月さんに話しかけている。

「へ~。カメラマンなんですか。姉ちゃん、何か困らせたりしてないですか?」

 久しぶりに真琴から姉ちゃん、なんて呼ばれるが、言っている内容はそれなりに酷いと思う。

「とんでもない! さっちゃんにはいつも助けられてるよ? 君のお姉さん、凄いんだから」

 睦月さんの方が得意げに、恥ずかしくなるくらい褒めてくれる。

「へ~え」

 それを聞いて真琴は、意味深にニヤニヤしながら私に視線を向けジョッキを口に運んだ。

「えっと。普段はどんな方と仕事してるんですか? 芸能人とか?」

 奈々美ちゃんも、興味津々で睦月さんに尋ねている。
 田舎じゃ芸能人に会う事もないもんなぁ……と思うが、私もそんなに会うわけじゃない。

「雑誌のモデルさんが多いかな? さっちゃんは橋本香緒って子の専属なんだけど知ってる?」

 睦月さんがいつもの優しい笑顔で奈々美ちゃんに言うと、「橋本香緒⁈」と興奮気味に立ち上がった。
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