年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 睦月さんは、たまに見せる意地悪な笑顔を見せると「ふふっ」と笑う。また姿勢を戻すとシフトレバーを動かしてハンドルを握っていた。

「なんか……大好きな子を家に閉じ込めて誰にも見せたくないって気持ち、今ならわかるかも」

 そんなことを言いながら。

 さっきから心臓が煩いくらいに鳴っている。睦月さんは平気そうな顔をして車を走らせてるけど、私は全然平気じゃない。顔を冷やすように手を当てると、自分の頰の熱が伝わってきた。

 私、まだこんな状態なのに、香緒ちゃんによく結婚するなんて言ったな……

 改めてそう思う。だって、手を繋いだだけでドキドキして、キスしただけで心臓が跳ねてどうしようもなくなっているのに。
 その先に進んだら……私は一体どうなるんだろう。そんなことを考えただけで頰がより熱を持った。

「さっちゃん、本当に良かったの? 何処か行きたいところがあったら遠慮なく言ってね」

 さっき車に戻った時そう尋ねられて、私は「特にはないです」と答えた。すでに香緒ちゃんと買い物してきたし。
 少し考えていた睦月さんから「じゃあ……ちょっとだけ俺の寄りたい場所に行ってもいい?」とお願いされたのだった。

 そして着いたのは、さっきまでいた若者街から一変して、ブランドショップの立ち並ぶ大人の街だった。
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