年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「むっ、睦月さん⁈」

 腕の中にいるくぐもったさっちゃんの声を聞きながら、俺は朔に言う。

「今可愛いって思ったでしょ? 俺の彼女見るの禁止ね!」
「はぁ? そりゃ可愛いなって思ったけどさ! 兄貴意外とケチだな!」

 そんな会話を繰り広げてから顔を見合わせ笑い合う。

「さっちゃんが可愛いのは本当だから仕方ないけどね」
「うわー! 兄貴に惚気られる日が来るなんて思ってなかった! ごちそーさま!」

 本当、いい歳した男の会話とは思えないけど、さっちゃんも俺の腕の中で笑ってくれている。

「じゃ、初詣行って来る。帰りは勝手に車だすから」
「わかった。風邪引くなよ?」
「ありがとう。朔もね?」

 弟に見送られて、俺達は歩き出した。隣で手を繋いで歩くさっちゃんは、しばらくクスクスと笑っていた。

「睦月さん、お兄ちゃんなんだなぁって思っちゃいました。ちょっと……可愛かったです」
「あー……何か恥ずかしい!」

 歩きながら頭を掻いてそう言うと、さっちゃんは笑顔で俺を見上げている。

「嬉しいです。弟さんを紹介してもらえて。それに、素の睦月さんが見られて」
「うん。俺も。紹介出来て嬉しい。近いうちに父さんも紹介するね」

 そう言って、俺はさっちゃんの手を握りしめた。
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