年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 1月が誕生日。それは重々分かっていたはずなのに、そう言えば何日なのか聞きそびれていた。

 どうしよう……一日だったら……

 不安になりながら睦月さんを見上げていると、ゆっくりその唇が動いた。

「……ふつか……」

 しばらく頭の中で反芻して、思わず「2日⁈」と声を上げると、睦月さんは楽しそうに笑いながら私の頭を撫でた。

「と、言うのは嘘で、二十日ね?」
「もう! ビックリさせないで下さい!」
「あはは。ごめんごめん」

 そう言いながらも、睦月さんは楽しそうで、私はまた揶揄われたんだと思いつつ、あまりにも楽しそうだから、つい許してしまう。

「その日、俺は仕事が夕方まで入ってるし、さっちゃんも仕事入ってるなら無理しなくていいからね? そりゃ、会えたら嬉しいけど、声聞けるだけで充分だから」

 睦月さんは、いつものように優しい顔で笑いかけてくれる。確かに仕事もあるし、睦月さんに負担はかけたくない。
 でも……

「私は……、我儘なお願いかも知れないけど、1分でもいいから睦月さんに会ってお祝いしたいです」

 顔を上げて、私を見ている睦月さんにそう言う。

 初めて好きになった人の、お付き合いを始めて最初の誕生日。たとえ一目会うだけでもいい、私は直接おめでとうを言いたいって思った。
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