年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
23.
 睦月さんのお誕生日当日――。

 この日、私のスケジュールは結構ハードなものだった。と言っても、仕事は午前中の2時間ほどで、それも撮影の仕事じゃなかったからまだ救われた。

 朝、まだ早い時間。まずかんちゃんを連れ出した。
 いつもの散歩コースの公園を抜けるころ、かんちゃんはどこに向かっているのか気づいたようで、興奮しながら私を急かすように先を行った。
 その場所に着くと、より興奮しながら吠えるかんちゃんと一緒に自動扉を入る。

「おはようございます」

 そう言うと、すぐさまかんちゃんそっくりの飴色の毛並みをしたミニチュアダックスが走ってきた。

「おはよう。咲月ちゃん、かんちゃん」

 穏やかにこちらにやって来たのは、ここのオーナーの女性。母娘(おやこ)でペットサロンを経営していて、今目の前にいるのはお母さんのほうだ。

「あらあら。はなちゃん、久しぶりにかんちゃんに会えて嬉しいのね」

 オーナーは目を細めて自分の愛犬を眺めた。

 かんちゃんは、この店で譲り受けた保護犬だ。そして、はなちゃんはかんちゃんと兄妹犬。2匹はさっそく楽しそうに戯れていた。

「明日まで、よろしくお願いします」

 私はオーナーに外したリードを渡すとペコリと頭を下げる。

「はい。お預かりします」

 ふんわりと微笑むと、オーナーはそれを受け取った。
< 357 / 611 >

この作品をシェア

pagetop