年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
26.
 そう言えば、お互いがお互いを知っているのに、このメンツがいっぺんに顔を合わせるって初めてだなぁ、とふと思う。

 司には、半月ほど前のバレンタインデー翌日に会った。と言うか突然『暇つぶし中』と電話があり、そして撮影現場にやって来た。
 その時俺は『……失恋したなら励ますから』なんて司に言ったけど、もちろん2人が別れるなんて本気で思っていたわけじゃない。きっと、この目の前にいる2人なら、何があっても乗り越えてくれる、そう信じていたから。

「ちょっと司? 岡田さんの現場ってどう言うことかしら?」

 瑤子ちゃんは司にそう言うとニッコリと笑う。どう見ても、楽しいからじゃないその笑顔に、司は一瞬たじろいだ。その顔を見て、『あ、司。現場に茶化しにきた話、してないんだなぁ』なんて、俺は先の展開をワクワクしながら見守った。

「いやっ! だから、暇だったからだ。別に邪魔はしてねーよ!」
「じゃあ何してたわけ?」

 より一層作り笑顔になる瑤子ちゃんを前に司はなかなか見せることのないアタフタした様子を見せる。

「司は、テスト撮影してくれたんだよね~?」

 助け舟……になるかわからないけど、俺が横からそう口を出すと、瑤子ちゃんは勢いよくこちらを向いた。
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