年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「……睦月さんは……今までお付き合いしてた方と、いつもこんな感じなのかと……思ってました」

 まだ俺に抱きつかれたまま、さっちゃんは驚いたように俺を見上げている。それに「いやぁ……。あはは」と決まりの悪い笑いを浮かべていると、司の声が飛んできた。

「だから最初から特別だって言っただろ。睦月に本気で結婚考えさせたのはお前が初めてだ、綿貫」

 司が急に真面目腐ってそんなことを言うものだから、さっちゃんは息を飲んだ。そして司に向けていた顔を、またゆっくりと俺に向けた。

「すごく……嬉しいです……」

 少し照れたように、でも花が綻ぶように笑うさっちゃんを見てるだけで、俺はどうしようもなく幸せな気分になった。

「うん。俺は凄く幸せ」

 そう言って笑いかけて、さっちゃんの頰をそっと撫でる。そして、ついついその顔に吸い寄せられるように自分の顔を近づけた。

「んっ! ううんっ!」

 瑤子ちゃんからわざとらしい咳払いが漏れ、俺たちはハッとしてそちらに顔を向けた。咳払いをした瑤子ちゃんは顔を赤らめながら視線を外していて、司の方はこっちを凝視してニヤニヤしていた。

「俺たちは気にせず続きをどーぞ?」
「しないから! って言うかそろそろ帰って! 2人きりになりたいから!」

 俺がそう言うと、「へいへい」と司は笑いながら答えた。
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