年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 あれ……? どこかで……会ったことない?

 その人は、睦月さんと同じくらいの身長で、年齢はお父さん達よりかなり上だと思う。その短髪には結構白髪が混ざっている。確かに初めて会うはずだけど、なんだろう? 俳優さんとかに似た人いたかな? となんだかモヤモヤしてしまう。
 その人はお見舞いの果物籠をお母さんに手渡すと、こちらを見た。そして、少し驚いたように目を見張っていた。

「あ、暁さん、東京から娘が帰って来てるんだ」

 お父さんがベッドの上からそう声をかける。でも、目の前のその人は、私を見て驚いているわけじゃない。その視線の先にいるのは……。

「なんだ……。なんでこんなところにいるんだ? ……睦月」

 落ち着いた声でその人はそんなことを言った。そして、そう言われた睦月さんは、さっきお父さんが見せた表情と同じくらい驚いていて、声も出ないのか口をパクパクさせていた。

「……ちょ、ちょっと! それはこっちの台詞! なんで……なんで、さっちゃんのお父さん達と知り合いなの? ……父さん」
「父さん⁈」

 その台詞に、さすがに当事者を除く全員が声を揃えていた。
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