年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「だってね、学君が他の誰かと結婚するところなんて見たくなかったから。で、私は両親に言ったの。私、お祖母ちゃんの願いを叶えてあげたい。私も大好きな人だから。それができなかったら、私一生悔やむと思う。だから、学君と結婚させてくださいって」

 そう言うとお母さんは顔を上げた。そしてふふっと息を漏らした。

「学君、驚いてたな。きっと勢いでうちに来たのはいいけど、お父さんに諭されて冷静になったんだろうな。でも私は諦めたくなかった。私、絶対説得するから、だから待ってて、って学君に言った。そしたら頷いて、待ってるって。その日はもう徹夜。ずっとずっと両親と話をしてた。で、結局私が折れないって察したのか許してくれた」

 そこで真琴がボソッと「母ちゃん、意外と頑固なとこあるもんな」と呟いた。私もそう思う。それは昔からだったんだ、とお母さんの顔を見て思った。

「お祖母ちゃんね、その頃にはもう1年持たないかも知れないって言われてたの。でも私達が結婚するって知って少し元気になってくれて。ちゃんとひ孫の顔も見せてあげられた。さっちゃんが1才になったのを見届けて、ありがとう、学をよろしくねって、笑顔で息を引き取った」

 私の顔を見ながらそう言って、お母さんは寂しそうな顔を見せる。それを見て、私もそれにつられるように、目が熱くなっていった。
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