【短】虚弱なウサギと乱暴なトラ
「ぐすっ……せん、せぇ……?」




ずっと聞きたかったけど、聞こえるはずのない声がして、幻聴かな、と思う。

今のわたしは、そんなに酷い状態なんだって思うと、怖くなって、さらにぎゅっと縮こまった。




グイッ


「! ぇ……?」


「こんな状態になる前に保健室に来い。何のために俺がいると思ってんだ」


「せんせぇ……本物……?」


「何馬鹿なこと言ってんだ。本物以外がいるわけないだろ」


「……っ、せんせぇ……!」




お姫様抱っこをしてズンズンと歩くせんせぇは、相変わらず怖くて、でも温かくて。

わたしは久しぶりに会えたせんせぇにしがみついて、わんわんと泣いた。



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