ヒルダの約束
ヒルダへ
 ベルリンの様子はどうだい。さぞかし様変わりしているのだろうね。敵による爆撃が頻度を増している。君は無事かな。無事であって欲しい。

 東部戦線への転属命令が出た。これから支度をして明日、ロシアへ向かう。戦況は当初予想していたほど捗々しくないと言っていいだろう。ロシア軍の抵抗は日に日に激しくなっている。

 こんな話を君にしても仕方がなかったね。優しい君は、いつも、どうして同じ人間なのに殺し合いをするのかと嘆いていた。我がドイツ軍が輝かしい勝利を収めたと言っても、またその可愛らしい顔を曇らせるだけだ。

 とりあえず、ぼくは無事だ。怪我もしていない。だから心配しなくていい。それどころか先日の戦いでは敵の戦車を七両も仕留め、また勲章を授けられる・・・ああ、済まない。戦争の話はしないと言ったのについうっかりしてしまった。

 休暇をもらったら、必ず君に会いに行く。君の誕生日には必ずだ。ああ、早く会いたい。

 ではまた。愛するヒルダへ。心を込めて。

7月20日 
Reinhard von Müller (ラインハルト・フォン・ミューラー)
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