お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
 王女とはいえ、小さなデロスでは大国の公爵家の令嬢よりも王女の扱いがずさんだと、以前タリアレーナから遊びに来た叔母のキャスリーンに呆れられたけれど、小さな国では国民の数も限られているため、貴族といえども所領は小さい。ましてや、王家が贅沢をするほどの重税を民に負わせるわけにはいかないので、基本、王女のアイリーンの侍女もローズマリー一人で、ローズマリーが休暇を取れば、別の部署から代わりの侍女が来るようになっているのだが、アイゼンハイムとラフカディオとそりが合わない上、むやみやたらと怖がって仕事にならないので、アイリーンの乳母をしていたローズマリーの母のジャスミンが代わりに王宮に詰めてくれる事になっていた。
 さすがに、コルセットを一人で締めることはできないので、侍女がいないとアイリーンも困るが、それ以外の身の回りのことは、基本何でも自分でできるように幼いころからしつけられていたので、侍女がローズマリー一人でも不便はなかった。

(・・・・・・・・ああ、気になって寝られない。敵陣に王族旗が上がっているなんて、今まで一度もなかったのに。いったい何を急に・・・・・・。しかも、ここのところは国境線を挟んでの睨み合いばかりだったのに、何を考えてのことなのかしら・・・・・・・・)

 アイリーンはベッドに入っても眠ることができず、何度も右に左にと寝返りを打った。
 そんなアイリーンの様子を二匹が心配そうに見つめては、互いに目と目で会話をしていたが、アイリーンに二匹の会話を聞く能力は残念ながら備わっていなかった。




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