お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
 アイリーンの思った通り、ウィリアムは自分の世話をカトリーヌと侯爵家のメイドに任せ、必要のある時だけコパルにアイリーンを呼びに来させた。
 ウィリアムが用があるのは妹のアイリーンではなく、王太子代行、並びに、国王代行を行っていた、王女アイリーンで、話す内容はすべて国政のことばかりだった。
 今年の穀物の作付けや果実の成長具合、収穫の予想。パレマキリア侵攻によって、特別会計から持ち出した軍事費用に関してや、自分が不在の間に行った法の改正や新しい条例の導入などについて知りたいということで、叔父の侯爵が持っているデロスにかかわる情報といっても、デロスが公式にイエロス・トポスを通して六ヶ国同盟に対して報告した内容ばかりだったが、それを見ながら質問したいことがあると、ウィリアムはアイリーンを呼び、話が終わると退室を命じた。

 行方不明だったウィリアムが見つかり、二人で国に帰ることができる。これ以上に幸せな事などないはずなのに、アイリーンの気持ちは暗く塞ぎ、一人三役の過労、パレマキリア侵攻による精神的な苦痛、そして、ダリウス王子に嫁ぐと約束してしまったことからくる不安、慣れない船旅での疲れ、何もかもが一気にアイリーンの上に降り注いだように、アイリーンは高熱を出して寝込んでしまった。

☆☆☆

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