運命に出会いました!〜年下令嬢は魔術師様を熱愛中〜



わたしのお祖母様はもう亡くなっているけれど、幼い時は一緒に暮らしていたこともあった。というのもわたしの魔力に対して敏感に反応する嗅覚はお祖母様譲りのものだったらしく、小さい時に周りの魔力に影響を受けてよく寝込んでいたのを見兼ねて自身の体質との付き合い方を教えるために一時期お祖母様に引き取られていたのだ。


懐かしいですわね……強制的に人の多い場所に放り投げられては魔力のにおいにぶっ倒れたり、かと思えば山の中に放置されて泣きながら必死で魔獣から逃げ回ったり。おかげで無理矢理にでも体が順応してくれて嗅覚も異常なまでに危機管理能力を発揮してくれるようになりましたわ。


その名残か身体強化やら自己治癒能力の活性化などに磨きをかけて体術や武術などにまで手を出してお転婆娘になって帰ってきたわたしを見て両親は愕然としていたけれど。だって素質ありそうだったんだもん、とはお祖母様の言葉ですわ。


そんなお祖母様はどうやら他国の出身らしく、一緒に住んでいる間にこの国にはない文化や考え方、その他の色々な知識を教えてくれた。その教育がわたしの根本に根付いているのでしょうね、だからこそこの国のグラナティス様に対する態度はアホらしいとしか思えない。


お祖母様はいつも綺麗な腕輪をしていた。子ども心にもそれはとても美しくて何度か欲しいと我儘を言ってみたところ、これはお祖父様と結婚した時にその愛の証明として贈られたものだからいくら孫のわたしにも譲れない、と真面目な顔で断られた。


どうやらお祖母様の故郷では結婚した夫婦はお互いの色を模した装飾品を身につける慣習があったらしい。お祖父様はそれを知ってお揃いの腕輪をお祖母様に贈り求婚したのですって。


残念ながらわたしが生まれたときにはお祖父様は亡くなっていて会ったことはなかったけれど、それを聞いてなんて素敵な人なのだろうと思った。だってその時のお祖母様、とても優しく幸せそうに微笑んでいたから。


だからわたしにとってのお揃いの装飾品は幸せな夫婦の象徴なのだ。





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