君と見た夢のような世界、それは切ないくらいに澄んで美しく



「…………」


 だけど。
 惺月(しずく)さんは沈黙の状態で。


「……どうなってしまうのかしらね」


 ほんの少しの間、沈黙した後。
 惺月さんはそう返答した。


「私たち案内人も、
 そうなってしまったときに、どうなってしまうのかはわからないの」


 そうか。

 惺月さんもわからないことなんだ。


「私も案内人の先輩から聞いただけだけだから。
 先輩も言っていたわ。
『私も案内人の先輩から聞いた』と。
 たぶん、そうやって伝わっているのだと思う。
 だから実際のところどうなのかは全くわからないわ」


 案内人の先輩から後輩へ。
 そしてまた次の後輩へ。

 そうやって伝わってきたんだ。


「そうなんですね」


「ただ安心して。
 現実の世界に日の出が来る一時間前と三十分前にチャイムが鳴るから
 日の出が来る時刻を忘れることはないわ」


 そうなんだ。

 チャイムが鳴ってくれる。
 そのことは安心。


「それは助かります」


「それに『心が呼吸できる世界』(ここ)と現実の世界は時の流れ方が同じなの」


 それは、わかりやすくていい。


「そうなんですね」


「それからね、私が知る限り、
 現実の世界の日の出に間に合わず、
『心が呼吸できる世界』(ここ)から出遅れてしまった人は聞いたことはないわ」


 惺月さんのその言葉に。


「それは、やっぱりチャイムのおかげということもあるのかもしれませんね」


 私がそう言うと。


「そうかもしれないわね」


 惺月さんは笑顔でそう言った。


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