エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「は、はい。いつも父の会社がお世話になっております。兄もこちらにうかがう機会が多いと聞いています」
突然珠希を呼び止めたのは、大宮病院の医師、大宮臣吾だ。
大宮病院院長の長男で、近いうちに父親の後を継いで院長の職に就くと言われている。
三十代半ばくらいで中肉中背のおとなしい印象の男性だ。
多少つり上がった小さな目を珠希に向け、不安げな表情を浮かべている。
「今日はいかがされましたか? お兄さんはこちらにときどきいらっしゃるのでご挨拶させていただく機会があるんですが。あ、まさか、体調が優れないとか」
「大丈夫です。今日は友人のお見舞いでこちらに伺っただけで、私はいたって健康です」
じりじりと歩み寄る大宮から離れ、珠希は慌てて答える。
大宮とこうして顔を合わせるのは二度目だが、前回、兄夫婦と一緒のときに街中で顔を合わせたときと変わらない近い距離感にたじろいだ。
「そうですか。安心しました」
大宮はそれまでの心配そうな様子から一変、安堵の表情を浮かべた。
けれど視線は珠希を捉えたまま、逸らそうとしない。
「あ、あの、それでは私たちはこれで」
珠希はたまらずそう言って、頭を下げた。
大宮に全身を観察されているようで居心地が悪く、早くここから離れたい。
とはいえ大宮病院は珠希の実家が経営している『和合製薬』の取引先であり、MRとして働く兄の拓真の担当病院だ。
次期院長の大宮の機嫌を損ねるわけにはいかず、珠希は愛想良く会釈し出入り口に足を向けた。
それまでなにも言わずに様子をうかがっていた志紀も後に続く。
「和合さん」
歩き始めた途端、大宮の声に呼び止められた。
珠希はため息を漏らしそうになるのをこらえ、渋々振り返る。
「これから昼食に出るんですけど、ご一緒にいかがですか? この近くにパスタがおいしい店があるんです」
大宮の言葉に、珠希は顔をひきつらせる。
突然珠希を呼び止めたのは、大宮病院の医師、大宮臣吾だ。
大宮病院院長の長男で、近いうちに父親の後を継いで院長の職に就くと言われている。
三十代半ばくらいで中肉中背のおとなしい印象の男性だ。
多少つり上がった小さな目を珠希に向け、不安げな表情を浮かべている。
「今日はいかがされましたか? お兄さんはこちらにときどきいらっしゃるのでご挨拶させていただく機会があるんですが。あ、まさか、体調が優れないとか」
「大丈夫です。今日は友人のお見舞いでこちらに伺っただけで、私はいたって健康です」
じりじりと歩み寄る大宮から離れ、珠希は慌てて答える。
大宮とこうして顔を合わせるのは二度目だが、前回、兄夫婦と一緒のときに街中で顔を合わせたときと変わらない近い距離感にたじろいだ。
「そうですか。安心しました」
大宮はそれまでの心配そうな様子から一変、安堵の表情を浮かべた。
けれど視線は珠希を捉えたまま、逸らそうとしない。
「あ、あの、それでは私たちはこれで」
珠希はたまらずそう言って、頭を下げた。
大宮に全身を観察されているようで居心地が悪く、早くここから離れたい。
とはいえ大宮病院は珠希の実家が経営している『和合製薬』の取引先であり、MRとして働く兄の拓真の担当病院だ。
次期院長の大宮の機嫌を損ねるわけにはいかず、珠希は愛想良く会釈し出入り口に足を向けた。
それまでなにも言わずに様子をうかがっていた志紀も後に続く。
「和合さん」
歩き始めた途端、大宮の声に呼び止められた。
珠希はため息を漏らしそうになるのをこらえ、渋々振り返る。
「これから昼食に出るんですけど、ご一緒にいかがですか? この近くにパスタがおいしい店があるんです」
大宮の言葉に、珠希は顔をひきつらせる。