断片集

廊下を歩いてくるところだったナツを呼び止める。
「おはよ」
「さっき会っただろ」
「そうだった」
そういえばさっきも似たような会話をしていた気がするな。
退屈だからなのか。誰もが、これといった話をしない。
「そういえば」
ので。先ほどの話をする。
ユキは、それは怪しいと言いながら、少し何かを考えるようにした。ぼくはその間に隣の客室を訪ねる。誰も居ない。基本、この辺の客室は、本日自由に使っていいのかもしれない。でも、みんなの目当てはアイドルなわけなので、誰もほとんど居ない。
隣の部屋のカーテンは、ハートを持った天使の刺繍がところどころに入っている。
誰のセンスなのだろう。
更に隣の部屋に行くと、バラの花の描かれた絵画が飾ってあって、また更に隣を訪ねると、カメラやあらゆる機材がぎっしり置いてあった。
その隣は、鍵がかかっている。
控え室とかにしているのかも。
「やっと見つけた」
しばらく部屋を回っていると、追いついたらしいユキが、ぼくの服の裾を掴んできた。
「ああ。何」
ぼくが聞くと、ユキはぜえはあと息を乱しながら微笑む。
「せっかく、今日のために集まったのじゃから……」
そう言って、こちらに腕を伸ばして。
「うん?」
「はい、ちーずささみ」
「ちーずささみ」
デジタルカメラを向けられて、写真撮影をした。
「フラッシュ、目が痛い……」
「ああ。悪い」
「いいけど……」

ちなみに後で、ささみチーズの方が良かったよねと言い合った。
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