【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

お祭りと妖精の花冠


 翌日は、晴天だった。

「あれ? この服は……」
「ああ、このあたりの民族衣装だ。以前も、カフェフローラで着ていたな?」

 白いブラウスに刺繍が施された赤いスカート、茶色のコルセットベルト、編み上げのブーツ。
 それが、今朝用意されていた衣装だった。
 少しだけ違うのは、コルセットベルトの編み上げひもが、淡いグリーンということぐらいだろうか。

「最近はあまり見かけなくなったが、祭りの日には皆着るそうだ」
「そうなんですね?」

 見上げた騎士団長様は、白いブラウスに銀色の刺繍が美しい黒いベスト、そして黒いズボンの出で立ちだ。
 赤いスカートの衣装に比べて色合いは控えめだけれど、大人の雰囲気を持つ騎士団長様が着ると、信じられないくらい絵になる。

「周囲の視線すべてを、さらってしまいそうですね」
「ああ、リティリア嬢はかわいらしいから当然だろうな」
「……もちろん、騎士団長様の話ですよ?」
「……ああ、そういえば」

 急に笑顔になった騎士団長様が、内緒話でもするように私の耳元に唇を寄せる。

「祭りの雰囲気を楽しみたい。そのため、周囲に騎士団長だと知られるのは、どうかと思うのだが」
「そ、それもそうですね?」

 せっかく、知り合いのいない場所で、お仕事のことなど思い出さずに、楽しんでほしい。
 私は、全力でうなずいた。それを見た騎士団長様は、どこか余裕を感じる笑顔を深める。
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