【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

「ところで姉さん」

 ソファーに隣り合って座った、私と弟。
 並べられたコーヒーは、弟がブラックで、私の分にはミルクがたっぷり入っている。

 別れる前は、コーヒーなんて飲まなかったのに、と密かに衝撃を受ける。
 そうよね。この時期の三年間を甘く見ていたわ。

「姉さん?」
「あっ、ごめんなさい。何かしら?」
「……そのポケットにある魔鉱石」

 オーナーが魔法で作ってくれたワンピース。
 たくさん詰め込んでいた魔鉱石を、着がえたときにスカートのポケットにもう一度詰め直した。
 
 だから、今私のポケットは、不格好なほどパンパンに膨れている。

「そんなにたくさん見つけるなんて、もうあの場所に行ったの?」
「……少し、どんぐり山を散策するだけのつもりだったのよ?」
「うーん。なんて言うか、昔から姉さんは、周囲を巻き込んで、無自覚にいろいろ引き起こすからなぁ」

 ……そんなことは無いと思う。

 そう思うのに、騎士団長様と出会ってからの日々、魔女様に妖精に魔鉱石。

 ……少なくとも、騎士団長様は巻き込まれているわ!?

「まあ、巻き込まれる人たちは、たいてい自分から姉さんのために飛び込んでいる気がするから、まあそのままの姉さんでいればいいと思うよ?」
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