【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

一緒に過ごす夜


 今日も久しぶりの来客に色めき立つ、騎士団長様のお屋敷に勤めるの使用人たちは浮き足立っていた。
 以前よりも華やかに飾られたエントランス。
 前回、普段着のワンピースで訪れてしまったことに気を使われたに違いない。
 着いた途端に連れ去られるようにお風呂に連れていかれ、磨きに磨き抜かれてドレスに着替えさせられた。

「あれ……。でも、このドレスはいったい」
「ああ、採寸したときに頼んでおいた」
「え!?」

 すでにクローゼットには色とりどりのドレスが収められている。
 もちろん、以前採寸してもらっているため、サイズぴったりだ。

「騎士団長様……」
「屋敷の中でくらい、名前で呼んでくれないか」
「アーサー様……」
「ああ、リティリア」

 淡いグリーンのリボンがあしらわれた、クリーム色のドレス。
 着心地がものすごくいいそれは、上等な生地で出来ているのだろう。
 いきなりこんなに贈られたら困ります、と言おうと思ったのに、あまりに満足げに騎士団長様が笑う者だから言いそびれてしまった。

「――――こんなの、私には過分です」
「俺としては、これでも足りないくらいだ」
「いったい、いくら使ったんですか」
「ちゃんと、余剰資金から出している」

 そういう問題なのだろうか。
 まだ、結婚したわけでもなく、婚約者としてのお披露目すらしていないのに……。
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