【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

幸せな朝の風景


「…………」
「…………」

 沈黙したまま、私たちはベッドの上で向かい合っていた。
 ずっと、腕枕してもらっていたのだろうか。手がしびれてしまうのでは……。

「――――あの」
「可愛い寝顔だったな」
「……えっと、その」

 混乱しすぎてしまった私は、思わず騎士団長様にクルリと背中を向ける。
 実際に私たちは、年齢差があるけれど、こんなにも余裕な態度を取られると、子ども扱いされているように思えてしまう。
 私が招いてしまった、この状況だけれど……。

 ドクドクと心臓が音を立てている。
 騎士団長様は、私のことを後ろからギュッと抱きしめた。
 ぴったりくっついた背中に感じるもう一つの鼓動。

「――――うん。そろそろ限界だ。起きようか」
「…………? は、はい」

 ベッドから出て行った騎士団長様は、さっと上着を羽織った。
 いつも整えられている髪の毛が、少し乱れている。と言うより……。

「寝癖……」
「え? ……ああ、参ったな。案外、寝癖になりやすくて」
「そうなんですね」

 少し慌てたように鏡台からブラシを取り出した騎士団長様。
 その様子に、余裕を取り戻した私は、手を差し出してブラシを受け取る。

 俯いた騎士団長様の髪の毛は、漆黒だ。
 艶やかで、思ったよりも柔らかい。

「アーサー様」
「……なんだろうか、リティリア」
「結婚したら、毎日こうして髪の毛を梳かしてあげますね?」
「――――そう。それは、ずいぶん幸せな朝だな」
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