【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

魔鉱石と妖精


 かつては、世界中に魔鉱石はあふれていたという。けれど、それはすでに昔話の中のことだ。

 私の淡い紫の瞳。妖精たちが愛するらしい魔力。
 この力で、見つけることが出来る魔鉱石は、時に宝石以上の価値を持つ。

「これは、魔鉱石の採掘場跡か」

 たくさん転がっているのは、ただの石ころに見えるけれど、知識ある人が見ればひと目で分かるだろう。
 この石ころは、抜け殻になった魔鉱石だ。

「……こんなにたくさんあったのに、どうして抜け殻になってしまったのでしょうか?」
「そうだな……。原因はいくつか考えられるが」

 抱き上げられたまま、荒れ果ててしまった採掘場を見つめる。

「リティリア。君は、あの場所に置いてくるべきだったかもしれないな」
「アーサー様、それはいったい」

 そのとき、今まで見たことがないほど興奮した妖精たちが、群れをなしてこちらに飛んでくるのが見えた。
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