【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

【銀賞記念SS】カフェ・フローラの指定席


 騎士団長様はお忙しく、ここ数日カフェ・フローラに来店できていない。
 そのことを寂しく思いながら、まだお客様もまばらな早朝のカフェで、店内の様子を眺める。

 今日のカフェ・フローラのテーマは、輝く水晶の洞窟だ。

「そういえば、騎士団長様が、水晶だけでできた洞窟があるって話していた……」

 時々斜めに差し込む光もオーナーの魔法で作られたものだ。
 そうだと理解していても、その度に水晶が七色に輝く様は美しくて、時間が経つのを忘れそうになる。

 そして、店員の衣装も水晶にちなんで、キラキラと、きらめく布で作られた精霊みたいなワンピースだ。
 水晶があしらわれた髪飾りは、動く度にシャラリと揺れる。

 その時、玄関のチャイムが鳴り、我に返った私は、慌ててお客様を出迎えた。
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