【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

サンドイッチと嵐の予感


 眠れない夜を過ごしても、まぶしい朝はくる。
 窓から差し込む朝日が、高いことに気がついた私は、ベッドから飛び起きた。

「うそっ! もうこんな時間!?」

 急がないと開店準備が間に合わないかもしれない!
 いつも私は、始業時間より少し早めにお店に入る。
 制服に着替えるのも時間がかかるし、お客様に喜んでもらえるように準備も完璧にしたい。

 時計はすでに、家をでなくてはいけない時間を指し示していた。
 私は、髪の毛を簡単に結ぶと、いつものバッグを抱えて部屋を飛び出す。

 はやる気持ちで、お店の裏口を開けて、今日のテーマを確認する。

 ――――ローズピンク、異国の神殿。

 裾の長い白いドレスは、ドレープがたくさんある、ストンとしたデザインだ。
 袖もひらひらとドレープを描いている。

「こ……これは、すごいわ!」

 毎日変わるテーマ。
 オーナーは、お仕事で世界中を飛び回る魔術師様だ。
 王国の外に実際に存在する景色や建物、小物を元に創りあげられているらしい。

 お店の中は、不思議なくらい天井が高い。
 中心はドームになっていて、全体がローズピンクに彩られている。

 魔法でそう見せているだけだから、実際はお店の大きさに合わせて、ある一定の距離以上は進めないようになっているけれど、とても広い。
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