【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

銀の薔薇


 そのあとは、どんどん来店されるお客様の対応で、時間があっという間にすぎていった。
 昼の時間を過ぎると、ひととき店内のテーブルには、空きができる。

「――――お疲れ」

 少し疲れを感じながら、遅めの昼ご飯をバックヤードで食べていると、急に上の方から声がかかった。
 久しぶりに聞いたその声に、勢いよく振り返る。
 そこには、紺色の宮廷魔術師の正装に身を包んだ、オーナーがいた。

 あいかわらず、人外の美貌を誇るわね……。
 それが、今日も変わらない、オーナーを見たときの私の感想だ。

 少しだけ顔色が悪く見える白い肌は、逆に神秘的な印象を相手に与える。
 暮れかけたまだ少し明るさを残す空のような紺色の髪、一番星みたいに輝く金色の瞳は、美しい、の一言。
 羨ましくなってしまうくらい長いまつげと切れ長の目、整った鼻筋に口元。

 それに、とてもいい香りがする。

 騎士団長様の、少し強面で、たくましい印象のかっこよさに比べて、絵画から抜け出てきたような美貌を持つ人。それが、このお店のオーナーだ。
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