【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

カフェ店員と騎士団長様



 ……思えば、つい先日、三日間来られなかった以外、お忙しいはずの騎士団長様は、毎日カフェフローラを訪れていた。

「私に、会いに?」
「そうだ、リティリア嬢、君に会いに」
「えっと、可愛いものが密かにとっても好きとか、恋人のためにデートの下準備とかではなく?」
「君は俺をなんだと思っているんだ……。そもそも、デートの下見に数ヶ月かける人間がどこにいる」
「何かの潜入調査とか……」

 こんな会話の最中も、私は騎士団長様にゆるく抱きしめられたままだ。
 腕の中にいると、クラクラしてしまうからそろそろ出たいです……。顔が熱いです。

「わかった」

 ギュッと強く一度だけ抱きしめられたあと、私は手の温度とは違って温かい腕の中から解放される。
 それはそれで、さみしいと思ってしまう私は、わがままに違いない。

「……何が、わかったのですか?」
「リティリア嬢」
「は、はい」

 何を言われるのかと、心臓をバクバクと高鳴らせて、騎士団長様を見上げる。
 こちらを見下ろした騎士団長様は、どこか緊張しているように見える。

「単騎で竜に挑む羽目になったときより、緊張するな」
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