【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

領地と秘密の瞳


 ***

 それから、なぜか騎士団長様のお屋敷からカフェフローラに通う日々が始まった。
 騎士団長様は、少し遅れてお店に入って、コーヒーを飲んでお仕事に出かける。
 もちろん、夜警もあるから帰ってこられない日もある。
 そんな日も、会えないことはない。
 この場所に、騎士団長様は必ず現れる。

「律儀ですね……」
「何がだ?」
「毎朝、コーヒーとサンドイッチを召し上がりにいらっしゃることです」
「……ん?」

 不思議そうに、騎士団長様は首をかしげた。
 私は、何かおかしなことを言ったかしらと、一緒になって首をかしげる。

「リティリア嬢、君に会うためだという発想はないのだろうか」
「え、毎日のようにお会いしているではないですか」
「――――それでも、ここで働いている君を見るのが好きなんだ」

 今日のテーマは、どこまでも続く草原と、ミツバチに蝶。
 私の衣装は、小さな羽がついた黄色と黒をベースにしたミツバチ。

 チョウチョも選べたけれど、少々フリルとビジューが多くて、平凡な私には着こなせそうもなかった。
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