俺と、悪いことしちゃおっか?

♯2



翌朝。


今まで感じたことのない重い足取りで、学校までやって来た。


私は、教室までやって来ると友達に声をかける。


「おはよう、梨沙子(りさこ)……って、それ!」

「おはよ、咲奈。ああ、これ? 『men's Black』の最新号だけど? 兄のを借りて読んでるの」


men's(メンズ) Black(ブラック)』とは、須藤先輩が専属モデルを務める男性向けファッション雑誌だ。


「かっこいいよねぇ、海里くん。偶然同じ学校だったのって、ほんと奇跡だわ」


梨沙子がうっとりした目で、雑誌に載っている先輩を見つめる。


梨沙子は、須藤先輩がモデルデビューした中学生の頃から先輩のファンらしい。


「ねぇ、咲奈もそう思わない?」

「うーん、そうだね。あはは」

「何? その反応〜! まぁ好みは人それぞれだけど」


確かに、須藤先輩はかっこいいけど。

かっこいいけどさ。


昨日、あんなことがあった身としては……梨沙子に素直に共感できないっていうか。


「ああ〜もう、海里くん大好き」


梨沙子が雑誌の先輩に向かって、愛を叫ぶ。


どこが良いんだろう、あんな先輩。


私は絶対、梨沙子みたいに好きになんてならないんだから。


ああ、昼休み……今から憂鬱だなぁ。


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