年下男子
朝、シーツに包まって顔だけ出して見上げるとそこに修平君がいた。

「おはよう」
「お、おはよう」

普段より乱れた髪と、眠そうな顔がいつにもまして若く見える。
こうして見ると、やっぱり年下なのね。
順のところの奥さんじゃないけれど、修平君が小学生の頃に私はもう大学生だった。そう思うと、私たちの関係って犯罪に近いものがあるのかもしれない。

フフフ。
幼くさえ見える修平君の横顔をチラリと盗み見て、そこから小学生の修平君を想像して、思わず笑みがこぼれた。

「何考えてるの?」
私の目の前まで近づいた修平君の顔が私を覗き込む。

途端に耳まで熱くなってしまった。
鼓膜の奥まで響く声も、逸らすことのできない熱い眼差しも、昨夜の記憶を呼び起こすには十分で、私は握りしめていたシーツで顔を覆った。

そうか、私は修平君と関係を持ったんだ。
少し動くたび感じる鈍い痛みと下腹部の違和感が、夢ではなかったと実感させる。

この年になるまで男性経験がなかったわけではない。
数は少ないけれど、愛し合った人はいた。
それでも、我を忘れるほど夢中になれた人はいなかったと思う。

「蘭さん、いつまでそうしているの。今日も仕事でしょ?」

ベットから起き出しキッチンへ向かった修平君の声が聞こえ、私も起き上った。
そう言えば、今日は平日。当然仕事もいつも通りある。
いくらあと1週間で退職するとはいえ、欠勤することはできない。
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