年下男子
王子様恐るべし
修平君を送り出し、いつもの時間に出社した私。
すで退職まで1週間を切ったこともあり、受け持った業務のほとんどは課長に引き継ぎを終えている。
しばらくは課長の負担が増えることになるが、来月には新しい人も入ってくるしすぐに落ち着くだろうと安心していた。
しかし・・・

「加山主任、これどうなっているんですか?」
朝始業よりも早い時間に、駆け寄ってきた男性社員。

「どうしたの?」
この焦り方は何かあったらしい。そう感じて私も立ち上がった。

「昨日の昼の出しておいた納品申請に決済がなくて、商品が出せません」
「え、それって、週末からの特設の商品?」
「ええ。ギリギリまで話がまとまらなくて今週になってやっと決まったんです。昨日のうちに出荷の申請をしたのに、まだ決済が降りてなくて商品が出せません」
どうしてくれるんですかと、額に汗をかきながら強い口調で迫ってくる男性社員。

確かに、明日からの特設で使う商品なら今日出さないと絶対に間に合わない。

「ちゃんと課長に言ってあるのよね?」
その業務は課長に引き継いだから、私にはもうどうすることもできない。

「言いましたけれど・・・加山主任も無責任じゃないですか?辞めるなら辞めるでちゃんと引継ぎをしてもらわないと」

きっと焦りの気持ちがあるからだろうと思う。
普段はもう少し優しい言い方をするのに、今はかなり強い口調だ。

「とにかく、私から課長に言っておくから」
「お願いします」

中間管理職なんてこんなものだとわかってはいるけれど、退職が決まったことで益々風当たりが強くなった気がする。
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