年下男子
「課長、それはセクハラやパワハラにあたりますが、理解の上での発言と思っていいのでしょうか?」
「え?」

突然聞こえてきた声に振り返ると、そこにいたのは修平君だった。

「なんだ、いきなり」
不機嫌そうな顔をしながらも、私に対する時よりも課長のトーンが下がる。

「僕には加山主任の言うことが真っ当に聞こえましたが?」
違いますかと詰め寄る修平君に言い知れぬ迫力があり、私も課長も黙ってしまった。

そう言えば、朝一で修平君の異動が発表になっていた。
「常務取締役兼企画室室長」随分異例の人事だけれど、血筋と経歴と実績、それに彼の能力を考えれば妥当な人事だろうと上層部の間では言われているらしい。
どう考えても彼は次期社長で、会社を経営する側の人間だ。

「課長、確かに少し言葉が過ぎるな」
修平君の後ろから現れた営業部長が困った顔をで口を開く。

「・・・すみません」
仕方なさそうに課長が謝った。

ホッ。
今回は修平君に助けられた。
そう思い胸をなでおろして顔を上げると、修平君と一緒に他部署の部長や専務、社長までもが営業のフロアに入ってきていた。

うわ、スゴ。
こんなメンバーがそろったところ、入社式でしか見たことない。

「すまない。みんな少し手を止めて聞いてくれ」
営業部長の声にその場にいた社員の手が止まり、一斉に視線が集中する。
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