竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~

20.女の勘と矛盾

「アイリス!」


 旦那様はわたしを見つけるなり、仕事の手を止めて駆け寄ってくれる。
 パッと見普段と変わらないけど、いつも陶器みたいに白くて綺麗な旦那様の肌が、今日は少しだけくすんで見える。目の下には薄っすらと隈が見えるし、明らかに寝不足だ。


「来てくれたのか」

「はい。お仕事の邪魔にならないかなぁって、少し心配だったんですけど」


 尋ねつつ、顔をそっと覗き込む。
 次の瞬間、旦那様に優しく抱き上げられ、心臓がキュンと高鳴った。


「邪魔な筈がない。会えて嬉しい。来てくれてありがとう」


 旦那様は嬉しそうに目を細め、首を横に振る。小さな声で「会いたかった」って繰り返す旦那様は、あまりにも可愛くて愛しい。


「急に帰れなくなってすまなかった。本当は自分で直接伝えたかったんだが」

「いえ。ニコラス達が様子を見に来てくれましたし大丈夫です」


 応えたら、旦那様はわたしを強く抱きしめてくれた。疲れていらっしゃるせいか、いつもよりも強く旦那様の匂いを感じる。『旦那様に会えたんだ』って実感できて、すごく嬉しい。


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