竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~

21.アイリスの待つ家

 旦那様はお腹が空いていたのか、わたしが持参した差し入れをあっという間に平らげた。例え空腹でも、品のある綺麗な食べ方に惚れ惚れしつつ、わたしは旦那様のためにお茶を準備する。


(……わたし、ちゃんと笑えてるかな?)


 表面上は何でもない風を取り繕っているつもり。だけど、心の中はズタズタのボロボロだった。
 何かをしていないと、不安と嫉妬で頭の中が一杯になっちゃう。ミモザさんと旦那様のことを考えてしまい、辛くて苦しくて堪らない。
 だから、さっきから旦那様の周りをうろちょろしたり、ロイと戯れてみたのだけれど、残念ながらちっとも気が紛れない。


「アイリス、こっちにおいで」


 その時、旦那様がそう言って、自分の隣の席をポンポンと優しく叩いた。穏やかで優しい笑顔に、わたしの心は揺れ動く。


(行きたい。けど、行きたくない)


 できるだけ旦那様の側に居たい。旦那様の温もりを感じていたい。
 だけど、今は醜い嫉妬心がわたしの心の中を占拠している。そんな感情、旦那様に見透かされたくない。気づかれて、嫌われたく無かった。


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