竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~

4.真新しい洋服と旦那様の帰宅

 温かいお湯で身を清めながら、ため息を吐く。
 旦那様の食事を作り終えてから気づいたこと、それはわたしが未だに魔族に襲われてズタボロになった洋服を身に纏っていたことだった。

 足にこびり付いた血は旦那様が綺麗に拭ってくれたけれど、泥や汗は身体に纏わりついたままで気持ち悪い。生きているだけでありがたいのだけど、こんな身なりで旦那様のベッドに横になって、挙句の果てに縋りついていたのか、と思うと、何だか申し訳なくなった。


(――――お父さんとお母さん、今頃どうなっているんだろう?)


 旦那様の屋敷には、意識を失っている間に連れてこられたため、父や母の遺体が今どうなっているのか、わたしには分からない。
 きちんと弔ってあげたいと思うけど、それだってやっぱり十歳児の力だけじゃどうすることもできない。一人で森に入るわけにもいかないし、二人を見つけたところで、運ぶことも埋葬することも難しい。

 もしもわたしが旦那様と再会できていなかったら、今頃わたしは死んでいたし、生きていたとしても悲しみで押し潰されていたと思う。前世の記憶がない唯の子どものままじゃ、この厳しい異世界を生き抜くことはきっとできなかった。
 そう考えると、やっぱり旦那様の存在って偉大。お父さんやお母さんはわたしがあまり悲しまなかったことを薄情と思ってるかもしれないけど。


(早く大人にならなくちゃ)


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