竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~

34.竜人族の背負う業

 心臓がバクバクと鳴り響いていた。気づいたら涙が零れ落ちていて、まともに座っていられない。
 胸を押さえるようにし、蹲るわたしの背をアクセスがそっと擦る。


「何で⁉ どうして旦那様が⁉」


 殺してほしい――――そんなことを旦那様がアクセスとニコラスに頼むなんて、信じられない。頭を大きく振りながら、わたしは二人のことを見上げた。


「だって、旦那様はわたしと結婚するんだよ⁉ 毎日『幸せ』だって、そう言ってくれるのに!」

「幸せだからこそ……だよ」


 ニコラスが神妙な面持ちでそう言った。


「リアンは具体的にいつ殺してほしいと俺達に頼んだわけじゃない。だけど、僕には分かる。あいつは、アイリスちゃん――――君がいなくなった後のこの世界に留まりたくないんだ」

「何、それ? じゃあ、旦那様はわたしが死んだ後に『自分を殺してほしい』って二人に頼んだってこと?」

「そうだ」


 ニコラスとアクセスは確信に満ちた表情で頷く。


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