竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
「学校なんて行かずとも、勉強なら俺が教えるよ」


 けれど、旦那様はそんなことを口にした。首を傾げ、眉間にうっすらと皺を寄せてて、何だかあまり雲行きが良くない。


「でもでも、それだと疲れて帰って来た旦那様に申し訳ないですし、わたしの方が日中時間を持て余してしまいます。お金は両親が残してくれている分がありますし、効率とか色々考えたら学校に通った方が断然お得です」


 亡くなった両親はわたしのために、きちんとお金を残してくれていた。荷物と一緒に、旦那様が持ってきてくれたのだ。
 遺産があるなんて、旦那様がいなかったら一生分からないままだっただろう。両親の愛情には感謝しかない。おかげで遠慮なく、学校に行きたいなんてことを口にできる。


「だけど、ここから人間用の学校までは遠いよ。歩いたら一時間ぐらい掛かってしまう」

「大丈夫です。そのために今日、鳳族の翼を買ったんですから!」


 戦利品の中から小さな羽を取り出しながら、わたしは微笑む。

 この世界で人間に大人気の商品、それが『鳳族の翼』だ。
 これを使えば、人間でも鳥みたいに自由に空が飛べるっていう代物で、持ち運びも簡単。その分お値段も張るんだけど、魔法万歳、と叫びたくなる一品だ。

 だけど、旦那様は不機嫌そうな表情でため息を吐き、わたしを見つめた。


「――――どうして急に学校に通いたいと思ったの?」


 悲し気な声音に胸がツキンと痛む。


(そんなの、あなたに釣り合う女の子になりたいからです!)


 思わずそう叫びそうになりながら、わたしはグッと言葉を呑み込む。


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