虜にさせてみて?
「……多分、抱けない」

「え?」

「じゃなくて……抱かない」

”抱かない”

――響にそう宣言されてしまった。

私がこないだまで駿と付き合っていたから?

それとも魅力がない?

……でもキスはしてくれる。

だとしたら、本当は好きじゃない?

「……本当は好きじゃないとか?」

「それは違う」

駿みたいに好きじゃないくせに、しちゃうのも問題だとは思うけれど。

好きなのに、それ以上は触れないって宣言されてしまうのもどうなんだろう?

今なら、駿よりも好きと言えるよ。

だからキスもしたいし、響に触れたいし。

私は駿しか知らないけれど、恋人同士でも”一線”を引くの?

「言わないつもりだったけど……ってゆーか、言ったら引くかも?」

「言って」

私、響が伝えようとしてくれた事が嬉しいよ。

だから、どんな事でも受け止めたいよ。

大好きな君の事、知って置きたいから。

「話せば長くなるんだけど……俺、何でバーテンやってるかというと」

これから話してくれる事、響にとっては痛くて辛い事だった。

私、響の彼女になったんだもん。

大丈夫だよ、響。

全部、受け止めてあげるから。
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