君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
理屈ではわかっていても、犯罪者の家族もどうしても許せない――真紘さんの葛藤が痛いくらいに伝わってきた。

「本音で話してくれてありがとうございます」

真紘さんの正直な気持ちが聞けてよかった。

ここで暮らした三カ月を振り返る。

いろいろあったけれど、今思えば宝物のような日々だった。

私はもう一度郁人さんの笑顔が見たくて、その願いは先日叶った。

だからもう思い残すことはない。

郁人さんの優しさに甘えてはいけない。真紘さんに嫌悪感を抱かせたくない。これ以上誰にも迷惑をかけたくはない。

約束の半年を待たずに、ここから去るべきだ。

「私は明日、お屋敷を出て行きます」

「そんな……急に?」

私が即断するとは思ってもみなかったようで、真紘さんは動揺を見せた。

でも元々あと三カ月で離婚する予定だったのだから、少し早まっただけなのだ。

「真紘さん、いつも私を気にかけてくれてありがとうございました」

私の言葉に、真紘さんは涙を堪えるような仕草をした。

真紘さんのせいじゃないのに、罪悪感を覚えているのかもしれない。

心のきれいな義弟がいてくれて、本当に幸せだった。


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