俺はずっと片想いを続けるだけ
伯爵家の馬車から姉が降りてきて、侍従が手を貸していた。
その背中に馬車内から天使が声をかけていた。

「お姉様、お帰りもお迎えに来ていい?」

着飾って出席する姉と一緒に馬車に乗って、
天上から可憐な天使が舞い降りた。
彼女が顔を出した伯爵家の馬車からは、虹色の後光が射していた。

俺の運命俺の天使、グレイス・リーヴァイス……

父が咳払いをしたので、視線を目の前に戻した。

「お前はその……
 一度見かけただけの幼女が好きだと?」

「幼女は止めてください
 俺が妙な性癖を持っているようじゃありませんか」

「違うと言うのか? いくつ違う?」

「7つです、大した差ではありません」

この時、俺は17で、彼女は10歳。
運命の出会いから既に4年が経っていて、そろそろ父に縁組を相談せねばと考えていたので、これは却っていい機会だと言える。
結婚可能な16歳に彼女がなれば、俺は23歳。
これ程ベストな年齢差はないだろう。

「あちらはお前の事を、どう言っているのだ?」

「グレイスですか?
 俺の事は知らないと思いますよ?
 彼女は初等部で、俺の居る高等部とは校舎も
 離れていますし」

「しょ、初等部……」

父が額を押さえていた。

「下校時間は初等部の方が早いので、昼休みに時々校庭を覗いています
 俺の目は、確かです
 周りのガキ、いや子供達とは全然違います
 カン蹴りのキックにセンスを感じます
 将来、どんな美人にな……」

語りだした俺を父が掌で制した。

「覗く、と言うな」
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